Monthly Archive for 1 月, 2012

DREAM OF SOUTH =南フランスへの夢


グロ一族、フランソワ・グロの娘でありブルゴーニュを代表する生産者
のひとりアンヌ・グロさんです。2011年3月、8年ぶりに来日した彼女から
ミネルヴォワのワイン、ドメーヌ アンヌ・グロ&ジャン=ポール・トロ
について話を伺いました。

今回、2009年ヴィンテージの再入荷に伴い、その時のインタビューを掲載
いたします。

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『オレンジと黒のコントラストを配色したラベルはこのミネルヴォワの
太陽をイメージしています。

自分では結構気に入っているのですがいかがですか?』

『キャップシールの3つの模様にも色々な意味があるんです。
3つのドメーヌ(アンヌ・グロ、トロ=ボー、アンヌ・グロ&ジャン=ポール
・トロ)ミネルヴォワの3つの畑(フォンタニール、シオード、カレタル)
私の3人の子供たちの意味もあります。涙の模様にも見えるでしょう。
大変な家業を継ぐのは辛いという私の涙なの』

笑顔で冗談を言うアンヌ。

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ブルギニヨンである彼女がなぜ、ミネルヴォワの地でワインを造り始めた
のかを尋ねた。

『私はブルゴーニュではある意味一人で仕事をしてきました。夫である
ジャン=ポールもドメーヌ・トロ=ボーにいたので一緒にワインを造ること
は出来なかったのです。夫婦二人でワインを造ることは私達にとって長年
の夢でした。』

広大なAOCであるミネルヴォワ、その西部に位置するカゼルという地区から
彼女たちのワインは造られます。

なぜ、広い地域の中からカゼルという場所を選んだのでしょう?

『ミネルヴォワは確かに広大ですが、その中でもまず土壌が複雑であること、
そして樹齢の高いブドウがあること、あとはヴォーヌ・ロマネと同じく標高
220メートルということです。沢山の複雑な理由があるのだけれど、簡単に
言えば私達の望むテロワールがあったということです。』

彼女がミネルヴォワのワインについて話す時、何度も繰り返し出てきた言葉
が“テロワール”であり“ブルゴーニュのやり方”でした。

しかしブルゴーニュでは基本的にピノ・ノワールやシャルドネといった単一
品種を用いてワインを造る。何種類もの葡萄が存在するラングドック地方の
ワインを造る上で、葡萄のブレンド、アッサンブラージュの苦労はなかった
のだろうかと聞いてみた。

『全く難しいことなんてないわ。私たちが造るのはブレンドのワインではな
いんです。土地の個性、テロワールのワインです。
ブルゴーニュにヴォーヌ・ロマネやシャンボール・ミュジニーがあるように、
私たちの3種類のミネルヴォワはそれぞれの区画に昔から植わっていた古木
をそのままワインに反映させているんです。』

彼女のミネルヴォワのワインには各キュヴェの葡萄について作付面積や樹齢
は記されているものの、ブレンドの比率などは明らかにされていません。
例えばこのキュヴェは強い味わいにしたいから意図的に古木の葡萄だけを選別
したり、年によってブレンドの比率を変える、ということではないのですね?

『そうです。フォンタニールやシオード、カレタルといった名前はミネルヴォ
ワのリュー・ディーです。それぞれ異なった土壌があり、それぞれに個性があ
ります。あなたが言っているのは組合などが造るような大量生産のワインで
しょう。それが決して悪いとは思わないけれども、私はブルギニヨンとしてテ
ロワールを尊重したワインを造りたいのです。』

彼女の造るミネルヴォワには、南仏のワインに散見される不自然に凸凹したバ
ランスではなく、まるで単一品種かのような継ぎ目のないバランスの良さが感
じられます。ここで最新ヴィンテージとなる2009年の4つのワインについて簡
単なコメントを紹介します。

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La 50/50 Vin de Table (Lot.2009)
ラ・サンコント/サンコントと名付けられたこのワイン。
セパージュが半々という意味ではなく、妻であるアンヌ・グロが50。
夫であるジャン=ポールが50という意味。
二人でワインを造るという夢を体現した名前です。
葡萄は半々ではなくカリニャン、サンソー、少量のグルナッシュ。

2009 Les Fontanilles Minervois
フォンタニールは区画の名前となります。
グレ・ダシニャンと呼ばれる砂岩質が多い土壌。
北西向きの区画、シラー、グルナッシュ、カリニャン、サンソー。
冷涼感のあるワインです。

2009 La Ciaude Minervois
フォンタニールとは異なり南向きの区画。
アジャルと呼ばれる白色石灰岩が表土に大量にあります。
そのため、反射熱が高く、晴れた日はスキー用のゴーグルが必要なほどです。
この白色石灰岩が熱を反射し、夜間は放出します。
そのため表土の石灰の下にある粘土は冷たいままで、これがワインに冷涼感を
与えます。

2009 Les Carretals Minervois
レ・カレタルの区画には樹齢100年となる古木のカリニャンが植わっています。
すべて樽熟成、うち新樽は50%です。樽はすべてブルゴーニュと同じものを
使用します。

このカリニャンこそが、彼女を魅了した葡萄品種だと言います。
ミネルヴォワのみならず、多くのラングドック産ワインはグルナッシュとシラ
ーが主体であり、カリニャンやサンソーといった多産型の葡萄は引き抜かれる
憂き目にあっています。しかし彼女はカリニャンの葡萄に特別に心を揺さぶる
バイブレーションを感じたと言います。

『確かにカリニャンは引き抜かれて、植え替えを推奨されています。
一般的なカリニャンはとても収穫量が高く、
ヘクタール当たり150ヘクトリットルの収穫量を造ることが出来ます。』

一部の南仏ワインには収穫量の低さをアピールしている物も少なくはない。
グリーンハーベストをしているようですが、収穫量を抑えることは強く意図す
るものなのでしょうか?

『ブルゴーニュとラングドックの収穫量を比べることなんてナンセンスです。
ピノ・ノワールは果皮が薄いから果汁が多いですが、カリニャンなど南の葡萄は
果皮が厚いから果汁が少ないでしょう?私たちのカリニャンはゴブレ式で植樹さ
れています。樹齢がとても高いのでひとつの樹から5~6房の葡萄しか実りません。
収穫量は自然と30hl/ha程度になるのです。』

ブルゴーニュよりも南部に位置するミネルヴォワ。
収穫の時期はブルゴーニュの収穫とは被らないのでしょうか?

『収穫の時期はブルゴーニュより少しだけ早いわ。
でもこれは、私たちのブルゴーニュも同様ですが、私は収穫には3週間の期間を
用意するの。3週間の中で、葡萄を味わい、糖度や酸を確認しながら天気の良い日
にだけ収穫をするのです。ブルゴーニュの収穫にも3週間費やすので、それと合わ
せたら、私はかなり長い期間を収穫に割いてます。』

収穫期間にそれだけの時間を用意する生産者はあまり聞いたことがないので驚き
ました。しかしブルゴーニュからミネルヴォワへの移動は大変ではありませんか?

『ブルゴーニュからミネルヴォワまでは、車で片道5時間ぐらいかしら。
でも収穫の時期だけは電車で行くようにしています。』

ブルゴーニュで孤高のワインを造るアンヌ・グロ。
積年の夢であった夫婦でのワイン造りについて本当に嬉しそうに語ってくれました。
片道5時間は日本人の感覚からすると随分、遠い距離に思い、
どれくらいの頻度でミネルヴォワに足を運んでいるのかを尋ねてみると、

『最低でも週に1回は必ずミネルヴォワに行っています。
私、結構、働き者なのよ。』
と言って彼女は笑いました。

造り手の喜びと情熱が感じられるワイン。
アンヌ・グロとジャン=ポール・トロの手がける
ミネルヴォワのワインに込められた想いが少しでも伝われば幸いです。

株式会社オルヴォー
村岡 覚